【第8話】かっこいいビジネスパーソンがいる職場

【第8話】かっこいいビジネスパーソンがいる職場

WAKE UPストーリー第8話

 

実際の就活や仕事に使える知識やスキルをストーリーで学ぼう!

【WAKE UPストーリー】毎週金曜日更新中

今どきの大学生、林が紆余曲折を経て成長していく様子を描いた、就活生~新社会人のための、連載型スキルアップコンテンツ。

登場人物紹介(※クリックで拡大)

WAKE UPストーリー登場人物紹介02

 

 

黒田
今ご紹介いただきました取締役の黒田です。はじめまして! みんな研修頑張ろうな!

 

今日から内定者研修が始まった。

内定者懇親会は日程が合わなかった人もいて、インターンも有志のメンバーだけが参加だったため、内定者全員がちゃんと集まったのは初めてだった。

冒頭には社長からの言葉があり、そして現在、取締役からの挨拶。

しかし取締役という重い響きとは異なり、軽やかな雰囲気があって、年齢も山田部長より若そうだ。少し焼けた肌を細身のスーツで包んでいて、この会社でこれまで出会った人たちとは何となく違っていた。

 

若くて取締役なんて、よっぽど仕事できるんだなあ……、黒田さん。

 

あれ?

 

黒田……さん……?

 

頭の中で、インターン中に伝説を残した『黒田』という名前が蘇った。

間違いない、この人だ。

営業部の現役社員のリストに名前がなかったから、辞めたのかと思っていた。

 

俺が超してみたいと思った『黒田』は、この人だったんだ……。

しかし、『すごい営業』という感じは全くしない。

 

今お世話になっている課長の吉川さんとは対照的だ。

吉川さんはいつも白いワイシャツをピシッと着こなしているが、派手さはない。体もがっちりしているせいか、自然と頼りたくなってしまう存在だ。インターン中、こんな上司になりたいなと感じていた。

それに対して黒田取締役は、かっこいいけれどつかみどころがない、良くも悪くも『にーちゃん』という言葉が似合いそうな存在だ。

この人がインターンの時に過去最高の売り上げを出した黒田さんなのだろうか……。

さっきは絶対そうだと思ったが、何だか違うような気がしてきた。

 

黒田
私は入社して10年目、今年取締役になったんだけど、しばらくは営業、そのあとに、企画部で課長・部長をしてました。

本当に、入社してからあっという間だったな、というのが率直な感想かな。

みんなも内定者として会社に来ていると、これから何があるんだろうとか、不安とか希望を持っている人も多いけど、実際に入るとめっちゃくちゃ面白いぞ

 

先ほどの社長の挨拶とは異なり、とても柔らかい感じと、その奥にある『熱』を感じた。

 

黒田
じゃあ、そうだな……。あなたは何したいの?

 

黒田取締役は最前列にいた内定者を指名し、質問をする。

俺のとなりに座っている女性だ。

 

インターン生
えっと……日本の食べ物がもっと海外の人に受け入れられるような商品を企画したいです

 

突然の質問に戸惑いながら、その子は答えた。

 

黒田
おーそうか、そうだよな!

日本の食べ物って実はまだまだ海外で知られてないものも多いし、寿司とか有名になってはいるけど、もっと日本にはおいしいものあるもんな!

何でもっと広まらないんだろうなー

黒田
んじゃ、あなたは?

 

……俺だ。

 

僕は……、いつかは実家の喫茶店を継ぎたいです。

けど、そのために、いろいろ勉強して、この会社でたくさんの経験をしてみたいです

 

黒田
なるほど、実家喫茶店なんだ! いいねえ。

うちのお客さんの大半は、大きなチェーンじゃなくて地元で愛されてる小さな店だ。

経験を積みたいなら、たくさんの人に会いな。そして早く昇進するといい。見える景色が全く変わるからな

 

黒田取締役は結局、全員に質問をしていった。内定者全員と目を合わせながら、会話する姿を見て、俺は純粋にかっこいいと思い始めていた。そして俺を含めた内定者一同も緊張から何となく解放され、場は和やかな雰囲気に変わっていた。

 

黒田
俺はこのあと、みんなに企画についての研修をするんだよね。

取締役にはなったんだけど、やっぱり現場が好きだから。みんなには今まで自分が経験してきたことをできる限り伝えたいと思う。

じゃあ、10分ぐらい休憩したら始めようか

 

休憩時間に入り、小島と一緒に飲み物を買いに行った。自販機に向かうあいだも、話題になるのはやはり黒田取締役のこと。

あんなスピードでひとりひとりに質問をして、それに対してしっかりと返答する頭の回転の早さもすごいが、気になるのは「インターンの時に話題になった黒田さんかどうか」ということだ。

直接は聞けないよなあ、なんて話していると、自販機のあるスペースには吉川課長がいた。

 

お疲れ様です!
小島
お疲れ様です!
吉川
おー林と小島か! お疲れ。今日から研修か?
はい! まだ具体的なことは聞いていませんが、今日からです
吉川
懐かしいなー。俺も8年前受けたな! 今回研修って誰がやるの?
黒田取締役です!
吉川
おー黒田さんか!! 面白い研修になりそうじゃないか。俺も受けてみたいな
受けてみたいんですか?
吉川
あの人の研修なら受けたいな。

新卒のころ、少し営業部で一緒になったことがあるんだよ。

すごかったなー

あっそうなんですね! ちなみに、最高記録出したインターン生に黒田さんっていたと思うんですけど、それって黒田取締役のことなんですかね?
吉川
そうそう。あの人、営業の時はたくさん記録作ったからな。

そのあと企画に移ってからも、ヒット商品を3回続けて出したりしてな。

すごい人だよ。あれでまだ30代前半だろ?

すごいっすね……
吉川
この会社じゃ異例のスピード出世だよ。

あの人にあこがれる人は本当に多いな。努力もしてるし、偉そうにしないし。

まー絶対面白い研修になるから、ちゃんと聞いとけよ!

はい!
小島
はい!

 

研修部屋に戻るあいだ、俺と、多分小島も、これからの研修についての期待でいっぱいだった。

 

部屋に戻るとほぼ全員が席に着いていて、研修はすぐに始まった。

 

黒田
んじゃ、今回のテーマは“企画”ってことで人事から命令されてるから、不備のないように頑張りまーす

 

内定者の数人がくすっと笑い声を上げる。

 

黒田
ただ、企画って聞くとすぐ“商品開発”って思う人もいるかもしれないけど、まずは社会人として必要な“企画力”っていうのを伝えていきたいと思う。実際に俺も一応ヒット商品を企画してここにいるから、間違ったことは言わないと思うぞ

 

和やかさのなかに、自分の仕事に対してのプライドや自信を感じさせるひと言だった。

 

黒田
んじゃ、企画力って何だ?

 

黒田取締役が、ホワイトボードを使いながら説明を始める。

 

1,新しいものを作ること

2,人気なものを作ること

3,作りたいものを作ること

4,求められているものを作ること

 

黒田
さて、どれが正解でしょうか?

 

内定者はそれぞれ手を挙げる。

多くの人が1か2に手を挙げた。

3、4は……いないのか。

俺は2を選んだ。

やはり売り上げのためには人気が大切だし、3は自分勝手に聞こえ、4は会社や消費者の言いなりのような感じがしたのだ。

 

黒田
答えは、4だと俺は考えている。

 

“求められているもの”を作るためには、表に見えているもの以外の多くのことを理解しなくちゃいけない。

企画をするには、求められている理由や、会社とか顧客が抱える問題をしっかりと知って、その課題を解決する能力が必要だ。

顧客が”何が欲しいのか”っていうゴールじゃなくて、”なぜ欲しいのか”って課題から答えを見つけていくわけだ。

 

これは企画だけじゃなく、営業だろうが、人事だろうがすべてに関係する能力だ。

そしてそこには”コミュニケーション能力”っていうのが大切になると俺は思う。

企画だと、つい自分がやりたいことを押しつけすぎたり、新しいことをやりたいって思いが強くなりすぎたりしがちだ。

けどな、求められていないことをやったところで時間の無駄になっちゃうことが多いんだ。それが原因で自分には才能がないと思ったり、認められないと思ったりして仕事が嫌になっちゃうんだよな

 

全員が『なるほど』とうなずく。

 

黒田
俺は営業の時、一番時間をかけて考えたのは当然“売れるもの”じゃなく“売る方法”だ。

そのなかで、お客様は何が欲しいのか、どう伝えたら買ってくれるのか、そこしか考えてなかった。

そのためにヒアリングをした。それと同時に競合他社の営業がどんな営業をしてるのかっていう競合調査をした。

企画に移った時も、会社とかメンバーがどんな能力を俺に求めているのか、そして自分の経験から”お客様は何を欲しがっているのか”ということを考えた。

それからそのニーズを競合の商品が解決できているのかっていう視点を組み合わせた。

つまり何をするにしても、”求められるものの調査”と、”競合調査”が大切なスキルになるってこと。

そしてそれにはヒアリングなんかも絶対に関係してくるわけで、いい情報を集められるかはコミュニケーション能力にもかかってくるわけだ。

 

最近はAIの発達なんかで、単純作業とかテンプレート的な営業であれば、営業職はいらないとも言われてる。

そして企画もただ単に競合の真似をするだけじゃ、資源や生産スピードで大手には勝てない。

だからこそ、人間として、“顧客とか会社が本当に求められているもの”を付加価値として提供できる企画・営業が今後は絶対に大切になってくるはずだ

 

俺は、話を聞きながらメモを取り続けた。普段からあまりものを書くことに慣れていなかった俺が自然と、だ。

自分の仕事に自信を持ち、相手の求めていることを理解し、その上で自分の気持ちを伝えられるような人間になりたい。

 

俺は決めた。

 

課長を目指す目標はもちろんそのままだが、いつかは黒田取締役みたいになるんだ、と。

 

次回へつづく

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