【第25話】武田悠斗にとっての企画職①マーケティングの前に

【第25話】武田悠斗にとっての企画職①マーケティングの前に
【第25話】武田悠斗にとってのマーケティング職①
実際の就活や仕事に使える知識やスキルをストーリーで学ぼう!

【WAKE UPストーリー】毎週金曜日更新中

今どきの新社会人林良介、佐藤綾子、武田悠斗の3人が紆余曲折を経て成長していく様子を描いた、就活生~新社会人のための連載型コンテンツ。

登場人物紹介(※クリックで拡大)

武田はそれなりに自分に自信があった。

幼いころからわりと成績は良かった。

大学にもすんなり入学を決めたし、恋人もそれなりにいた。友人にも恵まれ、特に大学4年間は楽しく青春を謳歌することができた。

しかし今、武田は焦り始めていた。

就職が決まって浮かれていたころは、「このまま自分の人生はうまくいく」と思っていた。

しかし、いざ働き出すと、自分のスキルのなさに唖然とするばかりだった。PCの操作ひとつとっても、社会人に必要とされるスキルはたくさんあるのだ。

同僚たちはPCをうまく扱っている。

武田は普段PCを頻繁には使わない。それで困っていなかったからだ。

大学時代もタイピング程度ができれば特に成績に影響はなかったし、iPadやスマホでもある程度の作業はこなせた。

会社ではそれではだめらしい。

 

岡崎
PCの操作もろくにできないんだな……。社会人になったらそれじゃ通用しないぞ

 

会社の2年先輩の岡崎は、あまりに作業の遅い武田にそんなことを言ってきた。

 

武田
すみません!パソコン、頑張って覚えてるところです!
岡崎
はあ……。あのな、パソコンの操作くらい大学時代に覚えてて当然のことなんだよ。今更頑張ったって遅いよ。まだ資料できてないの?

 

それに、と岡崎は続ける。

 

岡崎
根性だけで仕事しようと思っても、そんなに甘くないよ。俺、君見てるとイライラするんだわ

 

武田はぐっとこらえて、頑張ります、とだけ言った。

会社の帰り、久しぶりに林に電話をかけた。林もちょうど近場にいるらしく、飲みにいくことになった。今日は思う存分、愚痴をこぼしたい気分だった。

 

よお、武田―!

 

元気だな……。遠めに見てもエネルギーに満ちているのが分かる。

自分とは正反対だった。

林も営業の仕事ではさんざん悩んでいた様子だったが、今ではうまくやっているらしい。

話を聞かなくても、あの顔を見れば分かる。

 

武田
林、なんか元気だな……
なんかあったのか?
武田
まあ、今日は俺の愚痴を聞いてくれ、すまん

 

武田は林の肩に腕をかけた。

 

はは、俺もさんざん頼ってきたし、今度は俺が武田を励ます番だな

 

そういって、2人は小さな居酒屋へと入った。林はハイボールを、武田は生ビールを注文した。店内はまだ帰路に着きたくないサラリーマンたちで賑わっていた。

 

武田
なあ、林はPCって得意?
なんだ、いきなり?
武田
いや、なんか今日会社でさ、岡崎って先輩に『PC操作なんて入社前にできて当たり前だ!』とか言われちゃってさあ
いや、俺もそんなにできないよ。そもそも外回りばっかりだから、そんなにずっと机の前で向き合ってるわけじゃないし
武田
だよなあ。はあ……、営業ってそういうところいいよなあ
はは、まあな。いまの仕事、俺に合ってるってすごい思うわ
武田
俺さ、就活してて、すぐに内定もらえたじゃん? もっといろんな会社受ければ良かったなって、いま後悔してるんだ
武田、もしかしていまの会社、辞めたいのか?
武田
否定はしない
マジか……

 

そうこうしていると飲み物が運ばれてきたので、とりあえず乾杯をする。

 

いや、でもまあ、まだ辞めるのは早いと思うぜ? 始まったばっかりじゃん
武田
お前には分からないよ
は?

 

少し緊迫した空気が2人の間に流れた。しかし、すぐに武田はいつものように、にかっと笑った。

 

武田
俺、お前がうらやましいわ。自分に向いてる仕事ができてさ。将来は実家の喫茶店継ぎたいって夢もある。

俺なんにもないもん。すっからかん。ただ要領よく今までやってきたんだなって思うよ。

将来のこととか考えて勉強してきたつもりだったけど、足元が見えてなかった。そのツケがどっと押し寄せてきたって感じだよ

……珍しいな、結構ぎりぎりか?
武田
なんだいきなり?
こんなに仕事のことよくしゃべる武田、初めてだからさ

 

武田は、確かに、と思った。確かに愚痴をこぼしたりするのは自分らしくなかった。

今まで、悩みは全部自分の力で解決してきたし、これからもそうだと思っていた。

ただ、こんなに自信をなくした夜だけは、誰かに話を聞いてほしかった。

 

PC操作なんて、勉強すればすぐなんじゃない? 武田は器用だから、なんとかなるだろ
武田
そうかなあ……
そうだよ。それに仕事の上で大切なことって、PC操作ができるかどうかじゃないじゃん。

俺は何度も武田の人柄に救われたぜ。仕事のことでも、何度も何度も励ましてもらってさ。

正直に言うと、今この仕事を楽しめてやれてるのって、武田のおかげだと思ってる

武田
なんだよ、照れるじゃん
今の武田の会社が武田の良さを知らないなんてもったいないなあってさ、思うんだよね。だって、PC操作ごときであれこれ言われたくないじゃんか!

 

いつの間にか、林は武田以上に熱くなって語り始めていた。自分の身になって、悩みを共有できる関係というのは、そうそう築けるものではない。武田は林という友人を持って本当に良かったと思った。

 

武田
PC操作ができないのは、お前のせいでもあるんだぞ、林
え、なんで?
武田
大学時代、ずっと一緒に遊んでいたから、勉強する暇がなかったんだ。責任とれよな
なんだよそれ!

 

2人は笑いあった。武田はふと、自分がこんなに楽しく酒を飲めるのは本当に久しぶりなことに気付いた。

 

いつもの武田が戻ってきつつあるな
武田
なんだよ、それ
お前と話してるとな、元気出てくるんだよ。悩んでることがちっぽけに思えてきて、また頑張ろうって気持ちにさせてくれるんだよ
武田
なんだよ、今日は俺のこと褒めまくりだな
お前は俺の親友だからな! お前が俺の友達で本当に良かったと思ってるんだぜ
武田
お前、ちょっと酔っぱらってるだろ?

 

林は赤い顔をしながら、あ、ばれた?と笑った。

 

武田
酔っ払いに褒められても全然うれしくないな
なんだよ、そんな冷たいこと言うなよ、武田―
武田
さっきお前が、俺と話してると元気が湧いてくるって言ったじゃん?
うん、言った
武田
俺もそうだよ。お前は親友だ

俺たちはその後も盛り上がり結局、終電間際まで飲んでしまった。会計を済ませ、外に出ると、街全体がもわっとした熱気に包まれていた。

ほら! 走らないと終電なくなるぞ!
武田
分かってる!

 

2人は駅まで走った。

 

武田
なあ、この辺で本屋ってもうやってないよな?

 

前を走る林に武田は話しかける。

 

やってないだろうな。なんで?
武田
パソコンについて学ぶための教材が欲しいー!

 

武田は叫んだ。すれ違う人が不思議そうに自分のことを見ていた。完全に酔ってしまった2人には恥ずかしいとかそんな意識はなかった。

 

俺がお前にPC教材一式買って送ってやるよー!
武田
マジで!? お前、いくら酔っぱらってるからって、いまの言葉は忘れねえぞー!
マジだよマジ! いくらでも買ってやらあ!
武田
サンキューな! 楽しみにしてるわ!

 

2人は大きな声で笑いあいながら、楽しいひと時を過ごした。

こんな夜に、林に会えてよかった。

武田は改めて林の存在に感謝した。

 

次回へつづく

【第26話】武田悠斗にとっての企画職②再起!友人と負けん気と

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