【第23話】佐藤綾子にとっての企画職③

【第23話】佐藤綾子にとっての企画職③
【第23話】佐藤綾子にとっての企画職③
実際の就活や仕事に使える知識やスキルをストーリーで学ぼう!

【WAKE UPストーリー】毎週金曜日更新中

今どきの新社会人林良介、佐藤綾子、武田悠斗の3人が紆余曲折を経て成長していく様子を描いた、就活生~新社会人のための連載型コンテンツ。

登場人物紹介(※クリックで拡大)

綾子は木村さんの影響もあり、企画職でばりばり頑張ろうと張り切っていた。

木村さんのように初めて出した企画が通ったらいいな、と。

そのためにも、どういった商品を生み出せばいいのか、そしてターゲットはどこに絞るのか、それに悩んでいた。

初めは、悩みながらも綾子には根拠のない自信のようなものがあった。

学生時代も含め、今まで地道に頑張ってきて、努力した分の結果は出してきたつもりだ。

今回も頑張ればうまく進んでいくだろうと、そう思っていた。

しかし、いざ何かを生み出すとなると、アイデアが全く浮かばないのだ。

何が消費者に受けるのかも分からないし、どんなものが喜んでもらえるのかも、分からなかった。

うまくいっていないのは仕事だけではない。リョウとの関係もうまくいっていない。先日の電話ではケンカしてしまったし、結局仲直りすることなく、もうすぐ1週間が過ぎようとしていた。

綾子は、なんだか心が晴れなくてモヤモヤしていた。すべてのことがうまくいっていなかった。綾子は木村さんに相談してみることにした。

 

綾子
木村さん……
木村
どうしたの? 佐藤さん。なんか疲れてるみたいだけど

 

木村さんは苦笑していた。確かにいまの綾子は悩みからくる寝不足が続いて、目の下にはくっきりクマができてしまっている。疲れていると言われるのも当然だ。

実際に綾子は精神的に参っていた。

 

綾子
はい、正直疲れてます……。企画もうまくいかないし、彼氏とも……
木村
彼氏となんかあったの?
綾子
ケンカしちゃったんです。売り言葉に買い言葉って言うんですかね……。

でも、私、正直自分が悪いと思ってないんです。あっちに思いやりを感じないというか、いつも自分のことばっかり話して私の話は聞いてくれないし

木村
彼氏も新卒でいま働き始めたばかりだから大変なのよ、きっと。

彼には彼なりの理由で仕事で悩んでいて、佐藤さんは佐藤さんで悩んでいる。それだけなんじゃないかな

綾子
私、この仕事甘く見ていました。頑張ればすぐいい商品を出せると思ってたけど、そうじゃないんですね。

全くアイデアが浮かびません。人に喜んでもらえるものを作りたいと、本気で思っているのに……。

わからないんです。どういうものが売れるのか、どんな企画が通るのか

 

気が付くと、綾子は泣いていた。

最近の心労のせいももちろんある。どちらかさえうまくいっていれば、きっとまだ良かった、と綾子は思う。

仕事でもプライベートでもうまくいかなくなってしまったら、強がりの綾子もさすがに参ってしまう。

木村さんは綾子をなだめるように、肩にそっと手を置いた。

 

木村
仕事なんてまだ始まったばかりじゃないの! 

もちろん、企画職に大切な能力ってたくさんあるけど、アイデアはね、考え込んだ密度が濃いほど、閃くものなのよ。

まだ企画職に就いたばっかりで、とんとん拍子にうまくいくわけないじゃない

 

木村さんは続けた。

 

木村
でも、私、佐藤さんには期待してる。だって新人のなかで一番熱心に仕事してるところ、伝わってくるから。

悩んだら悩んだ分だけ見返りも大きいと思うよ。佐藤さんは肩に力が入りすぎてるだけだって! 

もっと余裕を持たないと、なにもかもダメになっちゃうよ。それじゃ、もったいないと思わない?

 

綾子は泣きながら頷いた。確かに言われてみれば、仕事を始めてからまだそんなに日は経っていないのに、なにをこんなに悩んでいるんだろう、とも思った。

 

綾子
なんか話聞いてもらったら、少し落ち着きました。ありがとうございます
木村
ううん、全然いいよ。きっと仕事でもプライベートでも誠実なのね、佐藤さんって
綾子
誠実?
木村
そうよ。仕事だって恋愛だって、適当にのらりくらりやってる人の方が多いじゃない。こんなに泣くまで悩むなんて今時珍しいかもしれないわよ。それは佐藤さんの取り柄ね
綾子
そうなんですかねえ……
木村
そうよ。それにきっと今頃、彼氏の方も仲直りしたがってるわよ。今晩思い切って電話してみたら?

 

綾子はリョウに電話するのは気が引けたが、このままではいけないという思いもあったため、木村さんのその言葉に頷いた。一言ごめんと謝れば済む話なのに、どうして自分はこんなに頑固なんだろうと自分を責めた。

夜。

綾子は家に帰ってシャワーを浴びたあと、一息ついてからリョウに電話することにした。緊張する。自分はいつの間にか臆病になっていることに気づいた。

しばらく呼び出し音が鳴ったあと、リョウが電話に出た。

 

もしもし、綾子?

 

と、慌てた様子で電話に出てくれた。

 

綾子
リョウ、この間はごめんね。きつく言い過ぎた

 

リョウは少し間を置いて、

 

いや、俺の方こそごめん。ていうか、全面的に俺が悪い。あの日はとにかく疲れてたから、綾子の話を聞いてやれる余裕がなかった

 

と、本当に申し訳なさそうに、呟くように言った。

綾子はほっとした。もっと早く電話をすれば良かったと思った。

 

綾子
良かった。じゃあ、これで仲直りね
もちろん

 

私たちは笑い合った。一週間ぶりに聞くリョウの笑い声は心地よかった。やっぱり私にはこの人しかいない、そう思えた。

 

綾子
私、最近企画職に配属されてさ。商品を企画する仕事なんだけど、なにがいいのか全くわからないんだよね。

ていうか、そもそもアイデアが閃かない。自分がこういうのがあったらいいなっていうのさえないの。参っちゃうよ

俺も営業のことでは悩んでばっかりだよ。立派に営業できるようになれるのかなって。

でもそういう時、綾子とか、会社の上司に話聞いてもらうと頑張ろうって気になれるな。先輩の話ってためになるよ。もう相談した?

綾子
うん、した。なんかアイデアは考えた分だけ閃く、みたいなこと言ってたなあ。もちろん人にもよるんだろうけど
先輩が言うなら、きっとそうだよ。俺はアイデア出したりするの苦手だけどさ。考えたら考えた分、うまくいくようになると思う。どんな仕事だってそうだよきっと
綾子
そうかあ。リョウが言うならそうだよね
え?
綾子
私、いま、すごくリョウに癒やされてる
俺も

 

私たちはいまきっと、2人とも同じ気持ちでいるんだなというのが、この小さなスマホ越しに伝わってくる。

綾子はいますぐにリョウに言いたい言葉を恥ずかしいけれど、思わず口にしてしまいそうになる。

そういう時、いつも言葉を飲み込んでぐっとこらえていた。だけど、言わなければ伝わらないこともある。今日は言わなければいけない日なんだ、と綾子は思った。

 

綾子
リョウ
なに?
綾子
大好き!

 

ベランダから見える月明かりがそっと雲の波を照らしている。

リョウが綾子の言葉にちゃんと答えてくれる人だということも、綾子はちゃんと分かっている。綾子はリョウが次になにを言うのかを当てることができる。リョウのことが、好きだから。

そして思った通り、リョウは少し困ったような、照れているような、どちらともいえる声で囁く。

 

俺もだよ

 

次回へつづく

【第24話】佐藤綾子にとっての企画職④

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