【第14話】ルート営業は気が楽?先輩社員との同行の旅

【第14話】ルート営業は気が楽?先輩社員との同行の旅

WAKE UPストーリー第14話

実際の就活や仕事に使える知識やスキルをストーリーで学ぼう!

【WAKE UPストーリー】毎週金曜日更新中

今どきの新社会人、林良介が紆余曲折を経て成長していく様子を描いた、就活生~新社会人のための連載型コンテンツ。

登場人物紹介(※クリックで拡大)

WAKE UPストーリー登場人物紹介

 

『人が旅をするのは到着するためではなく、旅をするためである』

 

この言葉が俺の中に響いていた。 

学生時代、一度だけバンドで歌う曲の歌詞を書いたことがある。

その時に、最初はどんなことを書いていいのか分からず、名言を探していた。

 

当時は自分が生きる上でのポリシーや座右の銘なんか何もなかったため、人生の格言などで検索をかけて見つけた言葉だ。

なぜかこの言葉だけは、俺の中にずっと残っている。

いま自分がここにいるのも旅の一部であって、これからもずっとこの旅は続いていく。

どこへ行くでもなく、ただ、道は続いているのだろう。

 

坂本
おい林、ぼーっとしてんな。行くぞ
あっ、はい

 

普通に怒られた。

 

先を歩く先輩社員の坂本さんに素直について行く。

そうだ。今日は実務と研修を兼ねた『ルート営業』のOJTの日なのだ。

最近ではめっきり暖かくなり、街路樹も濃い緑色になっている。

会社に通勤することにも慣れ始め、『出勤する』ということが日常になり始めている。

インターンの時は新規開拓営業だったため、ルート営業という仕事自体あまり理解できていない。

新規開拓課と比べてルート営業課は比較的平均年齢が高い気がする。

父親に近い年齢の社員も多かったため、接し方が分からず、俺から話しかけたりしたこともほとんどない。

坂本さんの年齢は直接聞いていないが、多分30代後半くらいなんじゃないかと思う。

普段話すわけでもない先輩社員と二人で外出すると、どうしても緊張してしまう……。

 

坂本
林、よく営業の部署に来てくれたな
えっ……、どうしたんですか

 

急に言われた坂本さんからの言葉に驚く。

 

坂本
いや、最近の若いやつらは、営業を避けるって聞いてたからな。

俺はずっと営業一筋だったし、俺らの頃は選択肢もそんなになかったからな。寂しいんだよ、少し。

だから、林が営業を志望したって聞いて、うれしかったんだよ

そうですね。確かに自分の周りでも営業を避けるやつは多かったです。

けど、営業って楽しいじゃないですか

坂本
おっ林は、営業好きか?
はい! まだ分からないけど、毎日楽しいです
坂本
じゃ、今日は初めてのルートの面白さも、もちろん厳しさも教えてやろう

 

坂本さんのうれしそうな顔を見て、俺もうれしくなった。

ちょっと意地悪そうな顔をしながら、にこやかに話している姿を見ていると年齢差も気にならなくなる。

 

今日は何件くらい回るんですか?
坂本
そうだな。今日は3件くらい回れればいいんじゃないか。

みんな長い付き合いのお客さんたちだから話も長引くだろうしな。

まずは肩慣らしも兼ねて、会社に近いところから先に回るぞ

はい。よろしくお願いします!

 

インターンの新規営業で1日100件近くのお客さんに電話していたことを考えると楽なのでは、と思ってしまった。

そんなことを考えながら歩いていると、会社から20分ほど歩いたところにある飲食店に到着する。

ここは近所でも老舗として有名な洋食屋さんで、口コミサイトなどでも高評価を得ている。前を通ったことは何度もあるが、いつも並んでいた。

 

へえ……、ここもお客さんなんですね

 

今回は、OJTの方針として事前情報を知らされずに同行しているので、どんなお客さんに会うのかも知らされていない。

 

坂本
こんにちはー。オーナーいますか?

 

まだ薄暗い開店前の店内。

奥にある厨房から、初老の男性が出てきた。

白い帽子に白いエプロンを着けたオーナーシェフは、とても優しそうだった。

 

オーナー
おっ、またこの時期が来たんですね。こんにちは。キッチンミカド オーナーの三門です
初めまして、アオキ物産の林と申します

 

ルート営業でもあいさつの仕方は変わらないのに、緊張しながらたどたどしくあいさつしてしまう。

差し出された名刺を両手で受けとる。自分でもぎこちないのが分かる。

 

オーナー
ハハハ、緊張してますね。いいんですよ。

うちは地元の小さな洋食屋ですから。もっと気楽にしてください

ありがとうございます。けどいつも人が並んでるのを外から見てて。いつか来てみたいと思ってました。
オーナー
今度ゆっくり食べにきてください。特製のオムライスをお出ししますよ
ぜひお伺いしたいです。その時はお願いします!

 

とても和やかな雰囲気だった。

新規の営業を経験した時は、お客さんにも営業側にも緊張感があった。それとは全く違う雰囲気だ。

 

坂本
そういえば、この前の卵使ってみていかがでした?
オーナー
いやー、あの卵はいいね。久々に新しいのを使ってみたけど、いい味だったよ。あの卵で作ったプリンが大好評で
坂本
良かったです。

黄身の味がしっかりしていて、色味が濃いものということだったので、ちょうどいいかと思ったんですよ。

最近じゃ三門さんのお店も若いお客さんが増えてるので、ブランド卵っていうのも話題になるかと思って

オーナー
そうだねえ。最近の若い人は、有機飼料とか、鶏が育った環境まで気にするし、ブランドも好きだからねえ。

良かったよ。相談してみて

坂本
そう言っていただけると、ほんとにうれしいです。また卵頼んでくださいね。

あっ、あとその卵に合う牛乳もあるんですよ。

どうしても卵が強いと、牛乳なんかもしっかりした味のものにしがちだと思うんです。

でもそうすると、味が重くなってしまう可能性もあるんで、あえて爽やかな牛乳を使うといいかなと。

最近では牛乳に入っている脂肪分でさえ気にする女性も多いですし

 

オーナー
なるほど、面白そうですね。

ちょっとその牛乳も今度持ってきてください。

いつも坂本さんはいい提案くれますね。シェフとして腕が鳴ります

坂本
またまた~

 

日常会話のような会話が進んでいき、営業なんてまるでしていないようだった。

お店を出て坂本さんとカフェに入る。

そこで取り出されたのは一冊の年季の入ったノートだった。ノートには、キッチンミカドと書かれており、中身を少し見せてもらった。

そこには、お店の歴史、働いている人の情報、普段のメニュー、そして期間限定のメニューまで書いてあった。

ひとつひとつのコンセプトなどもしっかり書かれていて、坂本さんはさっそくプリンの項目にメモを入れ始めた。

『卵』という単語の横に赤字で『大好評』

その下には、

『リピートしてもらうには?』

という走り書き。

素直にすごいと感じた。

これだけ細かい情報を整理しているだけでなく、次の展開まで考えているのだ。

 

すごい情報ですね
坂本
いや、まだまだだよ。あのお店が続く限り、このノートの中身は増えていくからな。

このノートも元々は先輩社員から受け継いだもので、こうやって長年信頼してもらってるからこそ、取引が続いていく。

その歴史を途絶えさせないように、期待に応え続けるのがルート営業の役目だ

楽しそうだなって簡単に考えちゃってましたけど、こういう細かいところまで意識していかないといけないんですね

 

営業は本当に奥が深い。

新規開拓で始まった、お客さんとの歴史が、ルート営業で続いていくことになり、そのお客さんの未来まで考える。

常に先回りしておかなければ営業は成功しないのだ。

キッチンミカドさんのように、アオキ物産と取引できて良かった、と言ってくれるお客さんの姿をみると、この会社に入社できたことを誇りに思える。

 

次回へつづく

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