「部下の女性にどのように接したら良いのかわからない」
「コミュニケーションの取り方が男性と違うので気を遣う」
……そんなお話をリーダー職の方からよく伺います。
私は長年、客室乗務員として女性中心の職場で仕事をしてきました。
そして、チームリーダーとしてサービス品質を高め、安全性を維持し、時間管理を行う3つのミッションを達成できるチームづくりに取り組んできました。
どうすればチームとして女性のチカラを最大限に活かすことができるのか。
男性リーダーの皆様にぜひ、今回の記事をヒントにしていただきたいと思います。
女性は言語より非言語を意識する
みなさまも男性脳、女性脳、という言葉を耳にされたことがあると思います。
男性だから、女性だからと限定しているわけではありませんが、脳のつくりが違うので、同じものを見ても同じ環境にいても、感じ方、とらえ方が全く違ってきます。
たとえば一般的に男性より女性のほうが感覚に対して鋭敏です。なにごとも五感で感じ取ることが得意なのです。
「視覚」の分野で考えると「見た目が9割」と言われるように、相手を第一印象でとらえる傾向が強いのも女性です。
一瞬で相手の服装などを記憶することができます。
また、目の前の人の表情から感情を読み取ることも得意です。
上司がいつも部下に不満げな表情で接していたら、「もしかしたら、私の仕事ができていないから上司は不満げなのかもしれない」と思われてしまいます。
本当はそうではなかったとしたら、チームの士気を下げることになり、あまりに残念です。
あなたはどんな表情で部下と接していますか?
男性リーダーのみなさんが表情を変えるのはそう簡単なことではないことはよくわかっていますので、まずは、ポジティブな言葉がけを増やすことをおススメします。
また、女性は「聴覚」の分野でも音が気になったり、アロマ好きの多くは女性であるように「嗅覚」にも敏感であったりします。
対人コミュニケーションは言語、非言語に分けることができます。
人は言葉の内容より言葉以外の周辺情報=「表情」「声のトーン」「声の大きさ」などで相手の印象をとらえるという心理学の研究結果が出ています。
特に女性は五感で相手の全体像をとらえる傾向があるので、ご自身の「声」や「香り」もリーダーの方には特に意識していただきたいと思います。
目的を達成するためのプロセスを認める
ビジネスでは常に結果が求められます。
それはあまりに当然のことなのですが、女性の場合は「結果」より「プロセス」を大事にしたいという傾向があります。
たとえば新規プロジェクトでの結果を喜ぶというより、プロジェクトメンバーと協力して作り上げていく過程にやりがいを感じたり、共感力を発揮しながらメンバーの士気を高めることに貢献したりするのが得意です。
以前、ある営業職の女性がこんな話をしてくださいました。
「新規案件の契約を得てきたのはチームの男性だったので彼の評価になりました。でも、実は私がクライアントさんとの関係づくりをしたのに、そこは上司から評価されていないんです」
とかなり不満気でした。
これは女性に限ったことではありませんが、結果が欲しい男性に比べて、女性は最終ゴールまでのプロセスを見てほしいというケースが多いのです。
これに対する具体的な対策方法としては、短時間でいいので定期的に面談をすることです。
話の中で経過や背景がみえてきますので、ぜひおすすめしたいと思います。
女性はアピールしないことを理解する(自信を持ってもらうためのコミュニケーション)
男女脳の違いは脳科学でも研究が進んでいます。
実は古代脳が現代にも強く影響しているそうです。
男性は古代、マンモスなどを獲ってくることが大事な役割でしたので、狩猟に長けた男性が強い、偉いとされてきました。
女性はコミュニティの中で子どもを産み育てることを続けてきたので自己アピールを好みません。
たとえば女性はビジネスにおいて、9割の自信がないと「私がやります!できます!」とは言わないのです。
「新しいプロジェクトをやらないか」と声をかけると「経験はありませんが、私でよろしければ、やらせていただきます」と控えめな反応をしてしまいます。
それに対して多くの男性は「やらせてください、がんばります!」とすぐに答えるのではないでしょうか。
男性は5割しか自信がなくても、「やります!」とまずはヤル気を見せ、たとえ失敗してもあまり引きずらずに次にチャレンジできるようです。
実力があるのにアピールしない女性たちに、「できていること」を伝えていけば、自信につながっていきます。
上司からそのような言葉がけをしていただきたいと思います。
ボスではなくリーダーを求める
男性は基本、絶対的なボスという存在には素直に従うことができます。
一方、女性はどちらかというと、「俺の言うことに黙ってついてこい」というボスより、同じ視点に立ってコミュニケーションができているチームリーダーについていきたい、協力したいと思うところがあります。
もちろんリーダーが最終責任者なので、決断を下し、時には厳しい指示も出さなくてはなりません。
でも「一緒にがんばろうよ」というフラットな関係のほうが楽しく仕事ができる、と感じるのが女性なのです。
女性部下には男性より言葉がけを増やし、普段から雑談ができていると仕事もやりやすくなると思います。
時には失敗談なども伝えて少し弱みを見せると、距離が近づく可能性が大きいです。
仕事ができるスキのない上司より、意外な一面が見えたほうが親近感が湧きます。
情報共有をマメにする
組織が何を目標にしているのか、リーダーがどちらに向かおうとしているのかわからないまま、言われた仕事だけをしていればいい、と言われたら部下のモチベーションは上がりません。
割り切って担当業務だけをしたい、という方もいらっしゃるかもしれませんが、派遣社員でも、正社員でも、チームの一員として役割を発揮していくことが組織の活性化につながるのではないでしょうか。
女性は必要とされている、とわかれば積極的に協力していこうと考えます。
ある経営者の方が女性スタッフに職場でのちょっとした悩み事を相談したところ、彼女が俄然ヤル気を見せて能力を発揮してくれた、とおっしゃっていました。
逆に疎外感を感じているとネガティブな感覚が増長されます。
コミュニティを大事にする女性は特にその傾向が強いのかもしれません。
私自身も、不得意な業務はそれを得意とする部下を頼りにしていました。
完璧なリーダーは一人もいません。得意不得意があって当然です。
できないことを頼ってみると、部下の見えないスキルを引き出すことにもつながります。
まずは現状における「情報共有」をしつこいくらいに続けていくことが強力なチーム作りの基礎になります。
いかがでしょうか。
これらの5つの条件は私自身がフライトで実体験してきたことです。コミュニケーションの質と量が組織の活性化につながります。
この内容が腑に落ちないリーダーの方は、周りの女性に「そうなの?」「こんな話はどう思う?」と訊いてみてください。
そのひと言が好感度アップの第一歩になると思います。
第4回へつづく
『JAL×フィンランド式 部下を伸ばすリーダーのコミュニケーション術』
水橋史希子
前職は日本航空の客室乗務員として26年間国際線、国内線に乗務し、のべ300万人を接客。
チーフパーサー時代はフライトするメンバーの強みを活かすチームづくりを積極的に行った。
安全指導教官の経験から、チーム内のコミュニケーションがトラブル防止と顧客視点向上に役立つことを確信し、研修事業を行うグロリアタイム株式会社を設立。
ひと言を添える声掛けの大切さを体系化し、接客業に限らず、女性ならではの視点を活かしたマネジメントを必要とする様々な企業で研修を行っている。
一方、保護者や子どもたちを対象に、フィンランドのコミュニケーション教育を参考にした言葉がけや子育て講座を行うフィンランドエデュケーション協会を設立。
子どもたちに学ぶことの楽しさを伝えるボードゲーム「森の社長さん」を開発。
すでにフィンランドの小学校の教材として採用されている。
主な著書