ビジネスパーソンに求められるスキルの1つにコミュニケーション能力が挙げられますが、多くの方がコミュニケーションに何かしらの悩みを抱えているのではないでしょうか?
「会話をしていたら突然、上司の機嫌が悪くなった」
「何度教えても後輩が業務を覚えられない」
「営業先で何を話せばいいのかわからず困ってしまった」
このような経験をしたことがあるビジネスパーソンの方が大勢いるのではないでしょうか?
職場で円滑なコミュニケーションが取れないと、思わぬ失敗を招いたり人々からの信頼を失ってしまうかもしれません。
この授業では、コミュニケーション能力に悩みがあるビジネスパーソンのために、コミュニケーション能力を向上させる3つのノウハウについて紹介します。
コミュニケーション能力を高めて、上司や部下、同僚から慕われるビジネスパーソンを目指しましょう。
マンドとタクトを理解したコミュニケーション
マンドとタクトはあまり知られていない心理学の概念です。決して難しい概念ではありません。
誰もが通常のコミュニケーションで無意識にマンドとタクトによる会話を行っています。
マンドとタクトの意味を知って意識をすることで誤解を招かないコミュニケーションができます。
そもそもコミュニケーションで大切なことは「何を言うか」の前に「何を伝えられたか」です。
どんな立派なことを言っても、相手に伝わらない、あるいは誤解をされては意味がありません。
コミュニケーションによる誤解は一方が言ったことに対して、相手が違う理解をすることから始まります。
誤解を防止する伝え方の1つがマンドとタクトです。マンドは要求や命令を伴う言語活動のことです。
タクトは出来事、事象を説明する言語活動のことです。
例えば、子供が「ゲーム機が欲しい」と言うのはマンド表現で、「これはゲーム機です」というのはタクト表現で誤解が生まれる要素はありません。
しかし、お茶の入ったペットボトルとスポーツドリンクが入ったペットボトルが目の前にあるときに「お茶」と言うと、マンドとタクトの両方の意味を持ったあいまいな表
現です。同様に夏の会議室で「今日は暑い」と言うと、相手はクーラーをつけろという要求のマンドか、今日は昨日より暑いというタクトか理解できません。
このように短いフレーズで、日本語に特有の主語を省いた会話では話し手と聞き手で理解と意味の差が生じる曖昧な表現になります。
マンド表現は、相手に行動を促す意味を持ちます。
そのため、話し手がタクトで言っているつもりでも、相手に行動しろという意味のマンドと理解されれば、時と場合によっては相手を不快にさせます。
単なる誤解であればコミュニケーションを続けることで意思の疎通を図れますが、誤解をこえて感情を害するとコミュニケーションを続けても修復が不可能になるかもしれません。
話し手は、伝えたいことがマンドなのかタクトなのかを意識し、誤解が生まれないような会話を心がけることが必要です。
意識した会話がすぐにできなくても、誤解が起こることだけでも知っておくと相互理解を深められコミュニケーションを円滑にできます。
アサーティブなコミュニケーション
アサーティブ(assertive)とは、「自己主張する、断定的な」を意味する英語です。
アサーティブなコミュニケーションとは、自分の主張を明確にしながら、他人を尊重して攻撃しない言い方のことです。
どんなに親しい間柄でも一方的に要求・命令を突き付けると、相手を傷つけて不快にします。
アサーティブな会話ができると自己主張をしながらも、相手を不快にさせないコミュニケーションができます。
軍隊では要求が明確なだけの伝え方でも大きな問題にはなりません。
しかしビジネスの世界では、上司と部下の間であっても聞き手が不快になる要求のコミュニケーションしかできないと、その組織は短期的には業績をアップできても長い目で見ると弱体化していきます。
このことは、社外に対する業務や製品の発注者と納入業者の関係であっても同じです。
モノ余りの時代は、号令だけかけても業績は上がらないため個々の社員がマーケットにあわせて知恵・能力を発揮させられる組織運営でなければなりません。
上意下達式のコミュニケーションでは社員のモチベーションを下げ、その能力を発揮させられないのです。
具体例を「禁煙スペースでたばこを吸う人物に対する注意」で説明しましょう。
良いコミュニケーション方法のアサーティブなコミュニケーションでは「私は気管支が弱くたばこの煙があると気管支の病気が悪化します。
ここは禁煙スペースなので良かったら喫煙スペースで吸っていただけませんか」のように言います。
良いコミュニケーションは「要求をはっきり伝え、不快にさせない」ことです。
コミュニケーションの方法を「要求をはっきり伝える/伝えない、相手を不快にする/不快にさせない」で分けると4通りのパターンができます。
例えば、要求が不明確で、相手に命令せずに不快にしない言い方は「ここは禁煙スペースだと思いますよ。喫煙スペースなら向こうにあるのでそこで吸ったほうが良いと思います」です。
要求が不明確で、相手に命令するので不快にする言い方は「ここは禁煙スペースだと思いますよ?私なら禁煙スペースでたばこを吸うなど絶対にしません。喫煙スペースで吸うべきだ」です。
要求が明確で相手に命令して不快にする言い方は「ここは禁煙スペースだから、あなたはここでたばこを吸ってはいけない。喫煙スペースで吸うべきだ」です。
禁煙・喫煙程度では「ここは禁煙スペースだと思いますよ」のようなあいまいな表現でも相手に伝わりますが、ビジネスの複雑な問題では、何を言いたいかを明確にして相手にして欲しいことを伝えるのに相手の受け止め方を考慮して不快に思われない言い方を考えないと、大きな問題に発展します。
「要求は明確に言い、相手を不快にさせない」ことはコミュニケーションをとるときに常に心がけておく必要があります。
事実ではなく意見として言うコミュニケーション
同じことを言う場合も事実として言うのと意見として言うのでは、後者のほうが聞き手に与える印象が良くなるのでコミュニケーションを円滑にできます。
例えば1人だけ売上が伸びていない部下に、「1日の訪問件数が5件だけど、皆は10件訪問している。売上を伸ばすには10件訪問しないと駄目だろう」という言い方は、事実を伝えています。
この言い方では、部下は売上、訪問件数が事実であるだけに反論ができずに逃げ場がありません。
多くの場合、言われた営業部員は意欲をなくします。
一方、「5件の訪問件数を10件にするには、1件の商談時間を短くして、かつ移動時間が少なくなるように考えて顧客を効率的に訪問するほうがいいと思うけど君はどう思う?」と言うのは、事実ではなく改善方法を意見として伝えています。
このように事実をストレートに言わないで意見として言うと、モチベーションを下げずに問題点を明確に伝えられます。
相手に事実(問題点)を言わないで、意見(改善案)として言うとプラス思考のコミュニケーションができます。
相手をネガティブな気持ちにしかしないコミュニケーション方法は、その時点で相互理解が途切れます。
まとめ
コミュニケーションの取り方が悪いと、意図していないのに相手に大きな誤解と不快感を与えて信頼関係を失うことがあります。
これらを防止する良いコミュニケーション・良い人間関係を築ける3つのノウハウを紹介しました。
そのノウハウとは、1つ目は「マンドとタクトを理解したコミュニケーション」です。
これによりあいまいな表現で相手に知らないうちに誤解を与える言い方をなくせます。
日本語の場合は主語を省略することが多く誤解を生みやすいので重要です。
2つ目は「アサーティブなコミュニケーション」です。
相手を不快にしてコミュニケーションが途切れ、人間関係が悪化することを防止できます。
3つ目は「事実ではなく意見として言うコミュニケーション」です。
相手を不快な気持ちにさせないで問題点を改善する方向にコミュニケーションを発展させられます。
以上の3つを押さえることでコミュニケーションを円滑にできます。