営業職は、業界や働く会社、本人の性格など、さまざまな要素によってその営業スタイルや働き方が変わる職種です。
その大きい要素のひとつに男性か女性か、という違いが挙げられます。
営業職を経験している人であれば、男性営業と女性営業パーソンでそれぞれ違うことはお分かりの人も多いでしょう。
ただ、具体的にどのような違いがあり、どんなところが強みになるのか、というのを明確に理解している人は意外と多くないかもしれません。
そこで今回は性別によって異なる営業について、とくに女性営業パーソンにフォーカスし、その強みやデメリットについて解説していきます。
男性営業パーソンと女性営業パーソンの違い
どういった職業でも性別の違いによって「強み」が変わってきます。
男性にはないものが女性にはあり、女性にはないものが男性にはあるのです。
ここでは、営業における男性と女性の違いについて詳しく解説していきます。
感性
女性には男性にない独特の感性があります。
細かいところに配慮できる「気配り」もその感性からくるもので、これは顧客にいい気持ちで営業を受けてもらうための武器になります。
もちろん男性が全く気配りができないというわけではなく、個人差もありますが、女性は細かいところへの気配りができる傾向にあると言われています。
また、女性は強い「共感性」を持っています。
これは、相手と同じ考え方や感情を持つことができる性質のことで、この感性も一因となり女性営業パーソンは「会社の数字よりお客さまを助けよう」というスタンスを持つ傾向にあります。
親身になって顧客の立場で考えられるようになり、これによって、利益のみを追求せず自分のことを考えてくれている、と顧客に思ってもらえる可能性もあります。
『売れる女性の営業力』(太田彩子著)でも、このほかに、相手に味方意識を持ってもらうために大切な「協調性」、顧客との絆を強めるのに役立つ「親和性」、顧客や自社のことを大切にできる「繊細性」や「母性」など、女性営業パーソン特有の「感性」が営業の武器になるということが書かれています。
外見の差別化
近年では男性営業でも、比較的カジュアルなジャケットにビジネス用のパンツなど、自分の好みで服装などを自由に変えられる時代になってきました。
ただ、そんな今でもやはり「男性の営業マン」というと、黒いスーツ姿に黒髪、など、どうしても似通った見た目になってしまうことは多くあります。
女性営業パーソンの場合、業種や会社にもよりますが、髪型や服装など見た目での差別化が男性よりもしやすい傾向にあります。
見た目も顧客の抱く印象に関わる大切な要素です。
自分らしさを出せる、というのはそれだけで武器にもなるでしょう。
体力面
基本的に外回りが多い営業では多くの顧客の元に足を運ぶため、体力の維持、向上がひとつの鍵となります。
男性は体力のある人が多く、女性は筋肉がつきづらく身体能力が向上しにくい上に、ホルモンバランスが乱れやすい体質の人が多い傾向にあるので、
体力・体調ともに比較的不安定なことが多く、ベストなパフォーマンスを常に発揮する、というのは難しいかもしれません。
営業の場合、会社によっては顧客の希望で休日出勤をしなければならないことも考えられるため、体力面では女性より男性に強みがあると言えるでしょう。
女性営業の「感性」で見るメリットとデメリット
前項でもお伝えした通り、女性営業パーソンとしての大きな武器のひとつに「感性」が挙げられます。
それは営業する上での大きなメリットになる一方で、一歩間違えるとデメリットになる可能性もはらんでいます。
ここからは、女性の傾向として挙げられる感性について一部を例にし、具体的なメリットとデメリットについて解説していきます。
「共感性」のメリット、デメリット
女性が持つ強い共感性は営業において大きなメリットとなるでしょう。
営業で大事なポイントのひとつに「お客さまの気持ちを知ること」が挙げられます。
前提として、顧客に商品やサービスを購入してもらうためには、顧客のニーズを知り、それに合わせた提案をする必要があります。
顧客の本当のニーズや本心を知るためには、心の底から顧客に対して共感し、顧客の気持ちになって考えられることが大変役立ちます。
女性には相手に対して深く感情移入できる人が多い傾向があり、それはひとつの利点と言えるでしょう。
しかしあまりに過剰な「共感」は、お客さまの立場に立つあまり、言いなりになってしまうということにもつながります。
一歩間違えると十分な利益を出せなかったり、話を聞くだけで獲得につながらなかったりすることも考えられるため注意が必要です。
「繊細さ」のメリット、デメリット
女性には男性以上の「繊細さ」があり、丁寧な作業や慎重な営業をしていきたい時にはそれが利点になることも多いでしょう。
営業で重要な基本的なビジネスマナー、立ち居振る舞いや所作などにおいてもその繊細さは役立ち、もちろん個人差もありますが女性のほうがやわらかい印象を与えることもあるため、顧客に対してより安心感を与えられる可能性もあります。
ただ、この「繊細さ」も一歩間違えると「気にし過ぎ」に変わってしまう可能性があります。
ひとつひとつの作業や行動に気を配るのはとても大切なことですが、その繊細さ、丁寧さを意識するあまり、業務スピードが遅くなってしまう可能性もあります。
営業においては顧客との商談だけでなく、社内での事務作業なども重要なため、それらの作業スピードを極端に落とすことにつながらないよう注意する必要があります。
「協調性」のメリット、デメリット
職場においてメンバーと協力することは、ほとんどの業界、職種においても必要なことです。
協調性に長けている人は性別問わず多くいますが、営業職で活躍している男性のなかには「自分だけで業務を完結させたい」と、すべて自分で処理することを望む人も多くいます。
女性にもそのような人はいますが、一般的に女性のほうが高い協調性を持つ傾向にあると言われています。
もちろん、仕事のできるビジネスパーソンであれば、自分ひとりで処理できる業務もあるでしょう。
しかし、時には仲間の力も借りないと、結果的に仕事に失敗することも有り得るのです。女性の有する高い協調性は、周囲の協力を得やすいことにもつながり、仕事失敗へのリスクも軽減できる可能性があります。
ただ、協調性を重視するあまり、「周囲の顔色をうかがう」ようになってしまうのはいけません。
「協力」という名目の元、自分の許容範囲を超える仕事を周囲から頼まれてしまったり、業務上の間違いを指摘できなかったりすると、その後の仕事に大きく差し支える可能性も考えられるのです。
女性営業として活躍していくために
ここまで女性営業パーソンの、男性との違いや強みなどについて解説してきました。
もちろん男性営業パーソンにも強みがあり、お互いの武器をうらやましく思うこともあるでしょう。
株式会社リクルートホールディングスや日産自動車株式会社など各業界大手7社は、2014年度からの2年間、合同「新世代エイジョカレッジ」という女性営業パーソンのためのプロジェクトを進めました。
エイジョカレッジの行ったアンケート調査によると、「女性の営業担当者は顧客から歓迎されている」という項目に対し、「歓迎されている」と答えたのは男性が42.9%、女性が25.9%でした。
この数字からも、男性営業パーソンは女性営業パーソンの強みをより意識し、女性営業パーソンは自分たち独自の強みをあまり意識していないことが分かります。
女性営業パーソンとして今後さらに活躍を考えている女性営業パーソンの方は、まず「女性営業パーソンとしての強み」を再度見つめ直し、それを活かしていくことを考えることも大切です。
そのうえで、「自分だけの強み」を確立し、ビジネスパーソンとしての成長を目指していただければと思います。