「ビジネスパーソンなら、簿記や会計の知識は必要!」
ビジネス関連の本を読んでいて、そんなセリフを目にしたことはありませんか?
結論から言うと、この指摘は真実です。
簿記の知識がないと、企業の状態が表示されている「決算書」を読むことができません。これは、ビジネスパーソンにとってかなり不利なことです。
さらに、経済ニュースの本当の意味が分からないことや、自分の仕事の幅が狭くなってしまうことも考えられます。
しかし、簿記や会計について知りたいと思っても、何から学べば良いか分からないという人がほとんどです。
ですから今回は、簿記や会計について全く知らないビジネスパーソン向けに、基本的な知識を丁寧にお教えしていきます。
そもそも簿記って何?
簿記とは、帳簿記入を略した言葉です。
企業が商品を販売したり、給料を支払ったりなどの一つ一つの経営活動を、一定のルールに基づいて「帳簿」という記録帳に記入していくことが簿記です。
簿記を勉強するというのは、この帳簿への記入方法を学ぶことを言います。
どんな企業でも簿記を使って、経営活動を記録しています。経理部の仕事は簿記のルールに従って、日々の経営活動を帳簿に記入していくことなんです。
しかし、ただ帳簿に記録を残すことだけが、簿記の目的ではありません。簿記の本当の目的は、決算書を作ることです。
決算書とは何?
決算書とは、企業の1年間の通信簿のようなものです。
簿記の記録をまとめて、「企業が1年間でどれだけ利益を生みだしたのか」ということや、「その決算時点において、企業がどれだけ資産と負債があるのか」を明らかにします。
決算書には、主に「損益計算書」「貸借対照表」「キャッシュフロー計算書」の3つがあります。
これらを一つずつ見ていきましょう。
損益計算書について
「損益計算書」とは、企業が1年間でどれだけ利益または損失が出たのかを記録するものです。
損益計算書には、
- 売上がどれだけあがっているのか
- 仕入れはいくらだったのか
という点や、
- 人件費はどれだけかかっているのか
- 交際費にどれだけ使っているのか
など、費用項目も細かく分けられて記録されているため、どんな費用にどれだけのコストがかかっているのかを確認することができます。
損益計算書を見る時には、利益を確認するだけでは十分ではありません。
利益が残ったのは、売上が高かったからか、あるいは費用を抑えているからなのかということを見るべきです。
逆に、企業に損失が出た時には、「売上が少ない」や、「〇〇費が多い」などの問題点を洗い出すこともできます。
貸借対照表
貸借対照表は、決算を締める日において、企業にどれだけ資産や負債があるのかを記録するものです。
貸借対照表の資産の項目には、現金や預金から、「売掛金(うりかけきん)」、車や建物、パソコンなどの固定資産の現在価値までが表示されています。
一方、負債の項目には、「買掛金(かいかけきん)」や借入金などの金額が表示されています。
そして、資産と負債の差額分が純資産として表示されています。
純資産の項目には、資本金や、これまでの利益や損失の累計金額などが表示されています。
貸借対照表によって、企業の安定度や資金調達の源泉などを確認することができます。
キャッシュフロー計算書について
キャッシュフロー計算書は、1年間の企業のキャッシュの増減を記録しています。(ここで言うキャッシュとは、企業の現金・預金のことです)
ビジネスにおいて、キャッシュは非常に大切です。
「利益は出ているのに、キャッシュが減っている」というケースはよくあります。
そういうケースは、例えば売上の入金がされていなかったり、商品在庫が増えていたり、固定資産を購入して、キャッシュが減っていることが考えられます。
キャッシュフロー計算書を見ると、1年間を通じて、このようなキャッシュの増減の要因を確認することができます。
決算書を見るなら、比較することが大切
決算書を見ることによって、企業の状態や問題点、今後の課題などが見えてきます。
ただし、単純に決算書を見ても、企業の状態はなかなか分かりません。決算書を見る上で重要なことは、比較することです。
例えば、前年と今年を期間比較することで、
「前年に比べて売上が下がっている」
「前年よりも借り入れの金額が減っていて、改善している」
など、企業の問題点や成長度合などが分かります。
また、同業他社の決算書と比較することで、自社の強みや今後の戦略も見えてくるかもしれません。
ここまでのポイントを一度整理しておきましょう。
- 簿記とは、企業の経営活動を帳簿に記入する方法をいう
- 簿記の目的は、決算書をつくること
- 決算書は、企業の1年間の利益または損失が分かる「損益計算書」と、決算時点における企業の資産と負債の金額が分かる「貸借対照表」、企業のキャッシュの増減を記録した「キャッシュフロー計算書」の主に3つがある
- 決算書を比較しながら見ることで、現在の企業の状態や今後の戦略が見えてくる
簿記の知識はビジネスパーソンにとって必須
ここまでの話で、簿記とは何かということや、決算書の重要性が分かって頂けたでしょうか。
ただ、簿記の知識は「経営者や経理の人だけが知っていれば良いのでは?」と思っている人もいるかもしれません。
しかし、それは間違いです。冒頭でもお話ししたように、簿記は全てのビジネスパーソンが知っておくべき知識です。
まず、自分の働いている会社の決算書を確認することで、会社の安定度や成長度合などが分かります。
また、損益計算書を通して自社の利益構造が分かれば、自社の製品やサービスの強みを見つけることができるかもしれません。
例えば、同業他社に比べて広告宣伝費が少ない場合には、取引先への営業で、
「当社は、広告宣伝費を抑えている分だけ、価格を安く提供できます。」
という説得力があるアピールも可能です。
自社の決算書が公開されているのであれば、まずは確認してみて下さい。
最初は何も分からないかもしれませんが、これから簿記を勉強する上での大きなモチベーションとなるでしょう。
それに加えて、簿記という知識によって仕事の幅が広がるのは、違いありません。自分のキャリアを形成する上で、経理に関する仕事も選択肢にあがります。
さらに、今の会社で出世していくことを目指すならば、経営者の目線が必要です。
自社の財務状況を把握した上で、どのようなプロジェクトを進めていけば良いのかをよりマクロな視点で提案していくことができれば、ビジネスパーソンとして大きな武器になるでしょう。
最後に、ビジネスパーソンとして簿記を学ぶならば、日商簿記検定の2級レベルまでの学習をすることがおすすめです。
実際に試験を受けるかどうかという点は問いませんが、とにかく仕組みを理解することが重要です。