【WAKE UPストーリー】毎週金曜日更新中
今どきの新社会人、林良介が紆余曲折を経て成長していく様子を描いた、就活生~新社会人のための連載型コンテンツ。
登場人物紹介(※クリックで拡大)
[speech_bubble type=”std” subtype=”L1″ icon=”hayashi_02.png” name=”林”]んー!! 起きるかー!!![/speech_bubble]
起きて、窓のカーテンを開け、ベランダに出る。
4月といっても、まだ朝の風は少し冷たい。
その冷たさが、起き抜けの頭をはっきりさせる。
インターンで仕事の面白さを経験してから、今日という日を迎えるのが楽しみでしょうがなかった。
今日は『入社式』なのだ。
眠気も覚め、部屋に入った俺は、部屋を見渡す。
インターンや内定者研修で配られた資料も多くなり、正式な入社前にもかかわらず、社会人経験が積み重なっていくような気がしてうれしくなる。
机の上には、アイロンのかかったワイシャツと、今まで履いたことのなかったビジネスソックスが並んでいる。
そしてキッチンには、
『入社式でお腹が鳴ったら恥ずかしいじゃん』
と言って綾子が用意しておいてくれた豚汁がある。
冷めた豚汁を温めているあいだに顔を洗い、歯を磨いた。
やがて温まった豚汁を一口飲み、心の中で綾子に『ありがとう』と言った。
会社までは1時間もあれば到着するが、家にいてもソワソワしてしまうので早めに出ようと決めた。
ワイシャツを手に取ると、その下に1枚の紙が置いてあった。
『今日からお互い社会人だね。
こんな手紙を書くなんて想像できなかったよ。
けど、一緒にいられてよかった。
昔は一日中一緒にいることが楽しかったけど、
今はお互い働いて、短い時間でも一緒にいられることが幸せです。
これからもっと忙しくなるからお互い大変だけど、楽しもうね。
私も負けないよ。
いま緊張してる?
大丈夫。安心して。
胸張って、会社行ってきてね!
綾子』
こんな手紙、いつ用意したんだろう。
読みながらにやけている自分に気づき、照れくさくなる。
よし。行くぞ。
パリッとのりが利いたワイシャツのボタンをひとつひとつ留めていくのは、社会人になる儀式のような感じだ。
仕事のスイッチが入るような気がした。
買ったばかりのスーツをカバーから取り出し、ドラマのようにかっこつけてスーツに袖を通せば準備は完了だ。
革靴もインターンの時はとりあえず安いものを買ったが、今日はこの日のために親父が用意してくれた新品の革靴を選んだ。
今まで親父から物を買ってもらった記憶はほとんど無かったが、急に実家から送られてきたのだ。
細身のストレートチップの靴を見ると、『まっすぐ進め』と親父から言われているような気がした。
玄関から外に出る。
外は快晴。
とても気分がいい。
歩いて駅に向かうあいだ、おそらく自分と同じ新卒として入社式を迎えるであろう人を多く見かけた。表情もさまざまだ。
駅のホームに降りると、タイミング良く電車が到着する。満員電車だ。
いつもなら満員電車は嫌いだが、今日の俺にはひとつのアトラクションのように楽しめた。
会社のある駅に着くと、スマホにメッセージが来ていることに気づく。
武田からだ。
するわけないだろう。と心のなかでツッコミを入れながらも、あいつからのひねくれた励ましに感謝する。
返信すると、すぐに既読になったが返信は来なかった。いつも通りだ。
心配してくれたのだろう。
会社にたどり着くと、既に数人が新卒用の席に座っていた。
小島もそのなかにいて俺に気づいたが、すこし距離があったため席に着いた瞬間に目だけで挨拶を交わす。
入社式の時間までは、となりの席のやつと軽い話をしながら過ごしていた。
やはりみんな初めての入社式にドキドキしているようだ。
時間になり、女性社員が前に立つ。最初は社長からの祝辞だ。
[speech_bubble type=”std” subtype=”L1″ icon=”unknown_m.png” name=”社長”]入社おめでとうございます。
今日という日を迎えられたことをアオキ物産としてもうれしく思っています。
これからの時代を作っていく、みなさんに大きな期待をしています。食品業界も、IT化、国際化が進み、時代に合わせたマーケティングが重要になっています。
その時に新しい感覚を持った君たちは大切な存在です。
今まで時代を築いてきた先輩社員たちの経験と、みなさんの新しい感覚を組み合わせることで、アオキ物産は変わっていきます。
ぜひ今日からは会社の一員として、積極的に仕事に取り組み、お客様に、仲間に愛される存在になってください[/speech_bubble]
社長からのメッセージは全体に向けられているものだったが、自分に言われているように感じられた。
その後は副社長の挨拶が続き、黒田取締役の挨拶もあった。
スラっとした黒いスーツを着た黒田取締役からは、オーラが出ていた。
見るからに仕事ができそうな雰囲気だ。
挨拶も研修の時とは違っていた。
以前はひとりひとりに質問を投げかけるような話の進め方だったが、今日は入社した全員を鼓舞するような内容だ。
[speech_bubble type=”std” subtype=”L1″ icon=”kuroda.png” name=”黒田”]
入社おめでとう。
君たちなら、自分を変えられる。
君たちなら、会社を変えられる。
君たちなら、業界を変えられる。
変化を恐れないでください。そして変化を楽しんでいこう。
今日から皆さんは新しい世界に飛び込みます。今まではこうだった、なんて気にしなくていいんです。学校のレベルとか、今の能力なんかも全く関係ありません。
今日、この瞬間から、生まれ変わったと思ってください。
一度ゼロになれば、どんどん成長できるんです。皆さんには無限の可能性がある。
マーケティングも、営業も、企画もすべて選んでいくことができる。
プロになれ。
あきらめない限り、いつまでも成長していくことができます。学校みたいに何年かで卒業することはないんです。
ビジネスパーソンとして成功するのに期限はありません。
もし期限があるならば、それは自分があきらめた時だけです。邪魔するような人間はうちの会社にはいない。だからビジネスを楽しみましょう。
そしてだれよりもすごい、ビジネスパーソンになってください
[/speech_bubble]
やっぱり黒田取締役はかっこいい。
言葉の強弱も、身振り手振りも、すべて人に伝えるためのものであると感じられた。
15年後、いや、10年後。
俺もこうやって新入社員にメ ッセージを届けられるような存在になりたいと強く思った。
次回へつづく
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