組織目標を達成するためには、組織を構成するメンバー一人ひとりが各々の持つ力を最大限に発揮し、信頼関係を築きながら活動することが大切です。
このチームワークの重要性について疑問を持つリーダーはいないはずです。
今回は、近い言葉で「チームワーク」ではなく、「チーミング」という考え方についてまとめました。
世の中は常に変化しています。
近年、テクノロジーの進化を始めとして社会環境の変化はさらにスピードを増しています。
特にビジネスの世界では、今まで成功したことがこれからも成功するとは限りません。
また、過去の延長線上に未来は存在しないことをリーダーは常に念頭におき、リーダーシップを発揮しなければなりません。
状況に応じてリーダーシップのスタイルも変えていかなければ、時代の変化についていけないことも想定されます。
これからどのようなことが起こり、どのようなスキルが求められるのかを考え、チームを率いていくことが重要です。
未来の組織を考える5つの変化
さて、リーダーとしてこれから捉えておくべき変化は次の5つです。
1. 企業戦略の変化に備える
産業セクターのボーダレス化が起こり、◯◯産業や〇〇業界という分類が不明確になっています。
市場環境の変化が激しく、ビジネス戦略も常に変化しなくてはなりません。それに伴い企業戦略も変化します。
今までは、現状を調査して分析し、明確な戦略にしてから戦術を決める、という流れの中でビジネスを確実に推進してきました。
ところが、このような流れで準備していたのに、一度決まった戦略が急遽変更となり混乱した経験はどなたにもあるのではないでしょうか。
それどころか何回も戦略が変わるということもあり、理不尽に感じた経験を持っている人も多いことでしょう。
しかし、このような戦略の変化は多くの企業で起こることになりました。企業を取り巻く状況は変化して当たり前です。
その変化に対応できない企業は当然、競争に負け、そのまま滅びることもあります。朝令暮改が当たり前とはいい切れませんが、戦略の変化は当然と捉えるべきでしょう。
このようにリーダーは、企業戦略の変化に備え、どうやってチームにこの変化を伝えるかを常に考えておくことが必要です。
2. リーダーシップの変化に備える
現在、あなたが部下のいるリーダーであれば、戦略が変化するように、あなた自身のリーダーシップを変えていく必要があります。
もし、あなたに上司がいれば、リーダーシップの変化についていくためのフォロワーシップが必要です。
リーダーは、今までの経験や知識だけでは通用しない時代になりました。
近未来の組織の中でリーダーシップを発揮するためには、リーダー自身が内省力を高め、世の中の変化を洞察する力、チームメンバーとの相互関係を築く力などがより一層必要となります。
3. 人口動態の変化に備える
今、世界の人口は72億人ですが、近い将来100億人になってゆくことが予測されています。
このような中では一緒に働く人のジェネレーションや性別、国別など属性の違いに捕われず、チームワークやコミュニケーションを高めて成果を上げることが望まれます。
人口動態の変化は、我々のとても身近な課題なのです。
4. テクノロジーの進化に備える
人工知能、VR・AR、ロボットの活用など、テクノロジーの進化により我々の働き方が変わることは明らかです。
テクノロジーの進化は、我々の仕事や生活を便利にしてくれる一方で、テクノロジーを仕事や生活に活用できる人と活用できない人が出てくることも考えられます。
リーダーにとってテクノロジーの進化はどのような影響があるのかを考える必要があります。
テクノロジーは常に速いスピードで変化します。リーダーが全てのテクノロジーを深く理解し、高い専門性をつける必要はありません。
ただ、どんなテクノロジーが仕事の生産性を高め、コミュニケーションを向上させるのか、その効果性を把握することはできます。
リーダーはテクノロジーの進化に興味を持ち、活用できるようになってもらいたいと思います。
5. 働き方の変化に備える
5つ目の変化が、働き方の変化です。
「働き方改革」というキーワードが政府から出されて、日本人の働き方は時間ばかりでなく、生産も高めてゆく取り組みが期待されています。
ロボットやAIによって無くなる仕事ができると言われていますが、人間が働かなくなるわけではありません。
人間は、常に誰かと一緒に働くという行為を止めることがないからです。
どのような働き方改革になっても、リーダーにとって、リーダーシップやチームワークは必要不可欠なものであると確信します。
また、世の中の変化に対し、リーダーも今までとは異なる仕事のスタイルが考えられます。
例えば、テクノロジーの発達により、異なる場所にいる人とのコミュニケーションがリアルタイムにストレス無く取れるようになっています。
チームのつながりを深める、「チーミング」という次世代スキル
グローバル化により、今まで働いたことのない人とも一緒に働く機会も増えます。
多様性が進み、異なる契約形態の人と一緒に働き、複数のグループの人と同時にプロジェクトを行うこともあるかもしれません。
過去1年かけて行なってきた仕事を、より短い時間で成果を出すことを求められることが想定できます。
これからは働く場所が違う、働く人が違う、働く時間が違う、ということが当たり前の時代になります。
そして、このような環境下でも、チームを組んで仕事をすることはむしろ多くなり、その都度集まったチームでも、同じ組織目標に向かって成果を出すことが期待されます。
このような能力のことを「チーミング」と言います。
「同じ釜の飯を食べた仲間」という表現があります。
一緒に長い時間をかけて築き上げた信頼関係はとても貴重です。このような仲間が一人でも多く存在すれば、困ったときに助けてくれます。仲間の力で仕事も捗るはずです。
しかし、これからの社会では、全く異なる環境で仕事を共にする人達ともチームを組むことになります。
新たな働き方を創造してゆかなければならない時代なのです。
この「チーミング」という能力をつけるには、どのようなことが必要なのか、それはまだ明確ではありませんが、コミュニケーション、コーチング、ファシリテーションなど、お互いが生産的に仕事を進めるスキルが必要なことは想定されます。
これからは、リーダーとして「チーミング」が期待されていることを念頭に、自分なりのリーダーシップ能力を高めていただきたいと思います。
<第4回へつづく>
『近未来を見据えたリーダーシップ』
下山博志
日本マクドナルドで32年間勤務。企業内大学を含む全社の人材育成の責任者となり、13万人を擁する幅広い従業員層に対する人材育成の仕組みを浸透させ、『2003年度日本能率協会人材開発優秀企業賞本賞』を受賞。
全世界共通の教育戦略プロジェクトにはアジア地域代表として参加した。
2004年に退社後、人材開発の総合プロデュースを行う株式会社人財ラボを創業。
上場大手企業から中小企業まで幅広く、人事・教育に関する戦略を支援し、企業内大学構築、リーダーシップ開発、マネジメント能力育成などの提供を行っている。
世界最大規模の人材開発非営利組織ASTD(現ATD)日本支部設立に寄与し、ATDインターナショナルメンバーネットワーク・ジャパン副代表ほか、熊本大学大学院教授システム学非常勤講師、NPO法人日本イーラーニングコンソシアム理事、神奈川県総合教育センター顧問アドバイザーなども務める。
2013年からは、システム開発を行う株式会社創新ラボの会長も兼任し、教育とICTの融合を図るラーニングテクノロジーを推進している。
早稲田大学大学院技術経営学(MOT)修士
主な著書
著作
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監修
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共著
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