これから社会人になろうとしている、もしくは成人を迎えた方のなかには、一生でどのくらいのお金が必要なのだろう、と漠然と不安を持たれている方は多いと思います。
昨今、働き方の多様化によってフリーランスの方や独立されている方も非常に多くいます。そのような場合、企業に属していたころは、いつも気付かずに税金を払っていたのに、個人になると意外に負担が大きくてびっくりされることも多いようです。
このコンテンツでは、5回に分けて、一生涯にかかる生活費や、実際にかかる税金・年金など、生活とは切っても切れないお金についての内容をお伝えしていきます。
今回は、第一回として「生活費と生涯賃金」をテーマに、実際に、生きていく上でどれくらいのお金が必要になるのかというお話をしていきます。
生活費ってそもそも何を指すの?
「生活費」という言葉はよく聞きますが、その定義が正確には分からないという方も意外と多いと思います。
実は、生活費というのは、厳密な定義がある言葉ではないのです。生活費とは、日常生活を維持するのに必要な費用(コスト)全般を指します。
つまり生活費は、その人のライフスタイルや生活レベルによって大きく異なってきます。
一般的に生活費に含まれるものとして挙げられるのが、
- 住居費
- 水道光熱費
- 通信費
- 食費
- 被服費
- 娯楽費
などです。
この他に、旅行費などを入れる場合もあります。
生活費における固定費と変動費
先ほどいくつか例で挙げたもののなかでも、毎月必ず同じ金額がかかってくるもの、月によって金額が変わってくるものがあります。
それをそれぞれ生活費の固定費・変動費と呼びます。
【生活費の固定費例】
- 家のローンなど住居費
- 車の駐車場・ローンなど
【生活費の変動費例】
- 水道光熱費
- 通信費
- 食費など
こうしてひとつずつ確認していくと、実は生活費における変動費の割合が大きいことが分かります。
ここが生活費のポイントです。
変動費が大きくなればなるほど、家計や個人の資金管理というのは難しくなります。
例えば家計簿をつける時に、「大体食費はこれくらい」といったルールを設けていくのもこの理由からです。
変動するが故に、きつい時は節約して、余裕がある時は多く使ってもいい、というような感覚でお金の管理をしていると、将来のための貯金が全くないというような状態に陥ってしまう可能性があるのです。
また、冒頭で「生活費はその人のライフスタイルや生活レベルによって変わる」ということをお伝えしましたが、実際、他の人がどれくらいの生活費で暮らしているのか気になるという方も多いのではないでしょうか?
意外にかかっている、一般的な生活費
最近では、家計簿ブームなどもあり「生活費」という大きなくくりを、ひとつずつ見直していこうという風潮があります。
そのため、食費や家賃、交際費などをしっかりと記録している方も少なくありません。
しかし、一生涯にかかる生活費を知っている人は意外に少ないのではないでしょうか。
日本人の平均寿命は、世界でも2位となっています。2016年に厚生労働省が発表したデータによると、日本人の平均寿命は女性が87.14歳、男性が80.98歳。
また、2016年の厚生労働省統計情報部「人口動態統計」での日本における平均初婚年齢は夫 31.1 歳、妻 29.4 歳となっています。
そして、2016年の家計調査における消費支出≒生活費の月平均は282,188円です。
そこから考えていくと、
二人世帯になってからの年数 80.98-31.1=49.88年
二人世帯の年間平均生活費 282,188円×12= 3,386,256円
二人世帯になってからの生活費合計想定 約168,906,449円
となります。
結婚をして平均的な生活をするだけでも1億6900万円近いお金がかかってくるのです。さらにここから、独身期間やどちらかが亡くなってからの期間を足すと、最低でも2億円以上のお金が消費支出としてかかってくることが想像できます。
1億や2億という金額はなかなかイメージしにくいかもしれませんが、普通に生活を送るだけでもそれだけのお金がかかると考えると、将来の生活設計や仕事選びの重要性を感じると思います。
実際に稼げるお金はいくらくらい?平均的な生涯年収
出ていくお金の想定はできましたが、それでは、実際にどれくらいの金額を一生涯で稼げるのでしょうか。
世の中には、年間数億や数十億といった年収・年俸を公表するスポーツ選手や、大企業の社長が存在します。
東洋経済による『会社四季報』に掲載している上場企業約3600社のうち、単体の従業員数が20人に満たない場合や、平均賃金の発表がない企業を除いた3201社による調査では、平均の生涯給料は2億1803万円となっています。
(参照:http://toyokeizai.net/articles/-/195054)
しかし、これは四季報に載っている大手企業に対しての調査です。
経済産業省の2014年のデータによると、平均的な給与金額は、大企業が38.0万円に対して中小企業は29.7万円となっています。つまり、中小企業で働く多くの人は、生涯賃金が1億7000万円程度であることが考えられます。
(参照:http://www.meti.go.jp/committee/chuki/kihon_mondai/pdf/006_04_00.pdf)
つまり、普通に働いているだけでは平均的な生活をすることも難しく、そのため、キャリアアップや年収アップを念頭に置いておかなければならないのが現状と言えるかもしれません。
夢をかなえるための生活費と生涯賃金
ここまで、実際の生活費と生涯賃金をもとにお話をしてきました。
そうすると、将来は暗いのか、死ぬまで働き続けなければいけないのかと、嫌な気持ちを持たれた方もいるかもしれません。
しかし、生活費の説明のなかでお伝えした通り、生活費の大半は変動費です。つまり、うまく設定すれば貯蓄などに回すことができるようになるのです。
基本的に生活費は、給与に対しての割合で計算されることが多いです。
計算方法はごく単純で、給与の手取り額に対して6割~7割を生活費の目安として考えることが一般的とされています。
もちろん、給与水準・生活水準などにもよりますし、地域による物価の違いもあるため一概には言えませんが、現状の生活を振り返りながら、もらっている給与に対して適切な生活費なのか、逆に今の生活費に対して十分な給与を稼げているのかを考えてみるのもいいかもしれません。
もし不安を覚えたなら、キャリアアップや給与アップを目指して早めの努力が大切です。
急にキャリアアップを目指しても、マネジメントなどのスキルはすぐに身につくものではありません。
少しずつ準備をしていくことが何よりも大切なのです。
今回は自分で支出額をコントロールできる生活費や生涯賃金についてお話ししました。
次回からは、自分では支出額をコントロールすることができないお金である「社会保険」「税金」といった部分をお伝えしていきます。