コミュニケーションの接点を増やすことが重要
日ごろから小さなコミュニケーションを増やしていくと、チームとして協力体制の基盤ができます。
「部下が何を考えているのかわからない・・・」
わからなくて当然なのです。
世代が違い、価値観も違うからこそ、上位職の方から言葉がけをして距離を縮めていくことが必要です。
そのためにできることを具体的にあげていきましょう。
①あいさつの「質」を上げる
すぐにできることの1つとして、「あいさつをブラッシュアップ」することをご提案します。
ご自身の「あいさつ」を振り返ってみてください。
特に朝のあいさつはその日一日の始まりですから、とても重要です。
上位職の発するあいさつは職場の雰囲気づくりに大きな影響を及ぼします。感じの悪いあいさつは、毒ガスをまき散らしているのと同じくらい悪影響を与えている、と強く自覚してください。
そして朝、職場で部下に会ったときは、きちんと「◯◯さん」と名前で呼び、声をかけることも互いの距離を近くする効果があります。
日本人は自分と人との距離を保とうとします。だからこそ、言葉がけで少しずつ心の距離を近づけていく必要があります。
②相手に興味を持って質問する
最近は雑談ができない若者が増えているようです。
ITの発展により電話で話すことがなくなり、人と人が顔を見て話す機会が減ってしまっていることが原因のひとつとして考えられます。
そのような若い世代が、就活で気になることは「業務内容」「処遇」「待遇」より「職場の雰囲気」だそうです。
とにかく与えられた仕事を一生懸命する時代ではなくなり、楽しく仕事をしたい、という世代が育ってきているということでしょう。
上位職の方々はそれらを理解した上で、緊張している新人に興味を持って質問をしていただきたいと思います。
その時に質問攻めにするのではなく、ご自身の話題も少しプラスしながら雑談ができると新人の緊張も和らいでいくでしょう。
繰り返しますが、相手のことはわからなくて当然です。
それを前提に、わからないからこそ、コミュニケーションを深めていく必要があるのです。
③部下を認めて課題解決
わたしたち日本人は、できていないところを改善すること、弱点や課題を解決すること、が得意です。
でも、部下を伸ばすために上司がすべきことは、「できていることを伝える」ことです。
誰もが最初から仕事ができたわけではありません。社長も部長も仕事ができない新人時代があったはずです。
そのことを思い出して、指示したことができちんとできているときは、「それでいい」と認めていくようにすると、様々な課題が解決しやすくなります。
フライトでは初対面のCAと仕事をすることが多い職場です。
初めて会った部下とチームになり、安全でより良いサービスを提供していくためには、積極的にコミュニケーションを取り合うことが欠かせません。
それにプラスして、「良いところ」=「長所や強み」、できている「成果」を言葉で伝えていくことが部下のモチベーションにつながります。
また、CAに求められるものは笑顔です。
笑顔は当たり前の世界ですが、それでも、初対面の部下に対して「~さんの笑顔は最高のサービスね」と伝えることでパフォーマンスは確実に上がるのです。
実はフィンランドの小学校では、日頃から先生が児童に「自分のできていること」を自覚できるようにしています。
子どものころから自分を客観視する習慣をつけているのです。とにかく先生は、一人ひとりの児童をよく見て、耳を傾けるようにしています。
職場でも同じです。
日ごろから部下をよく観察し、接する機会が少なければ情報を集め、面談をすることなども必要です。きちんと言葉にして「伝える」ことは、リーダーの役目です。
コミュニケーションが整ったら、指導し課題を伝える
関係性の基礎ができたところで、課題解決のための指導を深めていきます。
その時は、上位職のみなさまの経験を伝えてください。もちろん、人それぞれ仕事の仕方、覚え方は違いますが、なんらかのヒントになるはずです。
たとえばCAであれば、フライトの現場で担当する業務を事前にイメージトレーニングしておくと、機内で自然に身体が動くようになります。
それは私自身が実際に新人時代から行っていたことです。
担当業務のメモを作ることは誰もがしますが、それだけでなく、フライト前日に具体的なイメージを繰り返ししておくのです。
時間との勝負の仕事なので、できるだけ早く、適確に業務を行うためには流れを頭に入れておくことが鍵なのです。
そのように、うまくいった体験、またそれにプラスして失敗談も話していくようにすると、部下の成長も早くなります。
リーダーは面倒なことを面倒くさがらずに実践し、いざという時に強力なチーム力を発揮できるように努力していただきたいと思います。
それが、信頼されるリーダーになるためのポイントです。
- まず日ごろから職場全体のコミュニケーションの数を増やしておくこと
- 部下に興味を持って距離を近づけること
- 部下を尊重しながら課題を改善していく指導をすること
以上のように3つのステップで部下に言葉をかけていけば、チームのメンバーとして自分自身もがんばろうと成長してくれるはずです。
まずはファーストステップのあいさつからトライしてみてください。
第3回へつづく
『JAL×フィンランド式 部下を伸ばすリーダーのコミュニケーション術』
水橋史希子
前職は日本航空の客室乗務員として26年間国際線、国内線に乗務し、のべ300万人を接客。
チーフパーサー時代はフライトするメンバーの強みを活かすチームづくりを積極的に行った。
安全指導教官の経験から、チーム内のコミュニケーションがトラブル防止と顧客視点向上に役立つことを確信し、研修事業を行うグロリアタイム株式会社を設立。
ひと言を添える声掛けの大切さを体系化し、接客業に限らず、女性ならではの視点を活かしたマネジメントを必要とする様々な企業で研修を行っている。
一方、保護者や子どもたちを対象に、フィンランドのコミュニケーション教育を参考にした言葉がけや子育て講座を行うフィンランドエデュケーション協会を設立。
子どもたちに学ぶことの楽しさを伝えるボードゲーム「森の社長さん」を開発。
すでにフィンランドの小学校の教材として採用されている。
主な著書
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